[統一論題趣意書]
日本中小企業学会第30回全国大会
 
統一論題 「世代交代期の中小企業経営」

 
 
 

                      日本中小企業学会会長 三井 逸友
             日本中小企業学会第30回全国大会準備委員長 安田 武彦
          日本中小企業学会第30回全国大会プログラム委員長 大林 弘道


 
 
 
日本の高齢化について既に多くの指摘がなされているが、中小企業においても経営者、従業員の高齢化が急速に進展している。
 
たとえば2007年時点で自営業主の三分の一は65歳以上、中小製造業の従業員もその2割が60歳以上と引退の時期を迎えており、今後は、中小企業における経営、労働双方の代替わりが本格化していくものと予想される。
 
本来、中小企業経営者には定年が無く、また、従業員についても大企業に比べ定年制の適用が柔軟なことから、従来、高齢化が中小企業に与えるこうした問題は注目されることが多いとはいえなかった。
 
しかしながら、今日、世界的金融危機以来の同時不況と「デフレ」スパイラルが危惧される日本経済の先行き不透明化、進行する少子化や若者世代の理系離れ等、中小企業を巡る経営環境は変化してきており、これらは世代交代を課題とする中小企業に様々な影響を与えると考えられる。また、中小企業数は依然減少の一途である。
 
 
歴史を振り返ると、今から30年前の1980年、日本中小企業学会が産声を上げたころ、中小企業では、「子が親の事業を継ぎ、孫が子の事業を継ぐ」のは自然なことであり、また、技能承継も「職人は先輩の姿を見て技能を盗む」という姿勢で進められてきた。
しかしながら現在、経営や技能の承継を巡る環境は大きく変化している。そうした中、21世紀の世代交代を巡り、経営や技能の承継のあり方等について、様々な検討課題があげられる。
 
こうした問題意識をもとに今回の全国大会の統一論題は、「世代交代期の中小企業経営」とした。
 
 
なお、統一論題のもとでのテーマは幅広く、中小企業の承継経営者の確保・育成問題やそれに伴う中小零細企業の退出の問題、世代交代と産業集積、新世代のものづくり人材の確保や現場における技能承継等がそれに含まれる。
 
 
 学会創立から30年を迎え、一つの区切りともいうべき第30回大会の今回、それにふさわしい活発な議論が行われることを期待する。